ITS欧米標準化動向調査報告書

米国におけるITS実用化での大きな課題は、州の発言力が強く、方針が不統一であることである。米国運輸省(DOT)はITS標準化のために予算を獲得し、標準化項目の優位順位を付け標準化を推進している。DOTはITS標準化予算として、1996年9月から5年間で1,600万ドルを確保する予定である。標準化予算は、大半がドキュメントなどの作成のためにコンサルタントに対して使われる。さらにISO/TC204に関しては、上記ITS標準化予算とは別に政府資金援助が行われている。例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)には毎年12万ドルが資金提供されている

一方、欧州は多様な言語、通貨、文化、習慣の国々の集合体である。そこで、欧州全体の経済活動を活発化させるため、自動車やエレクトロニクスといった基幹産業における新技術領域や、重要な社会基盤整備といった分野では技術規格の標準化が非常に重要であると認識されている。特にITS分野の標準化は欧州通貨統合を控え、域内の自由かつ安全で効率的なモビリティーを確保するためにも重要な課題となってきている

基本的に欧州においても標準化作業は参加メンバーのボランタリに基づいている。ただし、優先度の高い標準化項目のプロジェクトチームなどには、欧州委員会から資金が提供される。プロジェクトチームでは、3年間にわたり100人以上のメンバーが活動しており、1.5億円ほどの予算が確保されていると考えられている。標準化ドラフトは、任命された専門家が作成している

米国は自国を中心とした北米をカバーするNational Standardづくり、欧州は「開かれた単一の欧州市場の完成」と動機は異なるが、それぞれでITS標準化のための体制の確立と予算の確保が進められていた。米国では、試験研究予算とは別に標準化ドラフト作成のための予算が確保されており、さらにドラフト作成のためのコンサルタント業者を活用しているところが目を引いた。また、長年のモータリゼーションに裏打ちされた数多くの道路交通関係の研究機関の存在といった背景が米国にはあることも見逃せない

欧州ではITSプロジェクトに標準化作業を義務づけており、標準化ドラフトがITSプロジェクトと標準化機関との間を何回も往復していくうちに効率的に熟成されていくところが印象的であった。 欧米では標準化すべき項目および達成時期を明確化し、標準化が整然と推進されていた

本報告書は、次世代の高度道路交通システム(ITS)に関する欧米の標準化活動状況を調査するため、専門家チームによる海外関係機関の訪問調査を行なった結果をまとめたものである(訪問日:米国1996年11月11日〜15日、欧州:12月9日〜13日)。なお、本報告書に記載の人名、組織等の内容並びに外国語表記は、訪問時に受領した書類および議論した内容を基に記述した

1.米国
 1.1 ITS関連標準化推進政策
 1.2 ITS関連標準化活動の組織・役割・推進体制
 1.3 ITS関連標準化活動の現状

2.欧州
 2.1 ITS関連標準化推進政策
 2.2 ITS関連標準化活動の組織・役割・推進体制
 2.3 ITS関連標準化活動の現状