ITS車載システムアーキテクチャの応用研究
【ITSベンチマークモデルカーの研究】報告書

関係5省庁で策定した高度道路交通システム(ITS)の全体構想は、道路交通を一層安全・快適・効率的なものとしながら、環境との調和を促進し、21世紀の経済・社会の持続的な発展を可能にするための主要な前提を示しており、この実現に向けて、関係省庁が協力して推進することが合意されています。 また、現在ISO/TC204等において、このITS関係技術についての国際規格化活動が鋭意進められているが、ITSは公共的機能を基盤にし、民間が供給する製品との組み合わせにより実現されるという特長を有しており、ITSの全体構想の円滑、効率的な実現のためには、公共的観点から長期的に発展プロセスをリードしてゆく必要があります。このため、各国とも官の強力な主導によって、標準化活動が進められている状況であります

こうした背景の中で、TC204活動における我が国の国際的な発言力を向上させ、規格化のための基礎的情報や知見の確保、充実を行うべく(財)自動車走行電子技術協会は平成10年度に引き続き、平成11年度も通商産業省から「ITSの規格化事業」を受託致しました。本調査研究は、その事業の一環として「ITS車載システムアーキテクチャ(SA)の応用研究」を実施するもので、平成10年度に構築した「ITS車載SA」の理解と活用を促進するためのツールとしてモデルカーデータベースを研究するとともに、このSAから導出された重要な標準化項目であるITS Data Bus(IDB)の標準化に向けた調査研究を行うものであります

この研究は、平成10年度に実施した「ITS車載システムアーキテクチャの研究【車載物理アーキテクチャの構築】ITS規格化S98−1、S98−2、S98−3」の研究成果であるITS車載システムアーキテクチャ(以下、車載SA)の理解と活用の促進、IDB(ITS Data Bus)などのITS標準化候補領域の標準化検討のベースを提供するために実施したものである。車載SAの理解と活用の促進に関する研究では、今年度は車載SAをビジュアルに解説するITSモデルカーデータベースの設計方針と評価版を開発した。来年度は評価版の使用結果をフィードバックして完成度を高くすると共に、実際に講習会などで車載SAの理解促進のためのツールとして活用する。また、標準化検討のベース提供に関する研究では、今年度は具体的な装置を搭載した車両をビジュアルに表現し、車載SAで抽出した標準化候補領域の標準化検討のベースを提供するITSベンチマークカーのコンセプトを開発した。来年度以降については、ITSベンチマークカーを用いて、今年度の車載SAの研究で開発した標準化ガイドラインの各項目の標準化効果を検証し、具体的な標準化戦略の提案を行う。なお、両者の研究で開発した車両などのビジュアルなイメージは相互に活用し、開発の効率化を図った

報告書では、これらの研究成果に関する下記2件について報告する。すなわち、車載SAをビジュアルに解説するITSモデルカーデータベース、車載SAに基づいてIDBなどを搭載した車両をビジュアルに表現し、これらの標準化検討のベースを提供するITSベンチマークカーについて報告する。この中で、HMI(Human Machine Interface)を介して様々なITS情報をドライバに提供する場面において、安全性を考慮した情報提示方法の標準化が重要であると考え、その一構成要素であるドライバへの情報提示を管理するIM(Information Management)に関し、先行研究を行ったので合わせて報告する。
<1>ITSモデルカーデータベースの研究
<2>ITSベンチマークカーの研究

これまでに、ITS車載システムに関するシステムアーキテクチャである車載SAとして、ITSサービスを実現する車載システムの機能と情報、およびその関連を表したITS車載論理アーキテクチャと、機能を実現する上で必要となる物理的構成要素と情報、およびその関連を表したITS車載物理アーキテクチャの開発を終えている

今後は、車載SAを活用した大規模システムの開発、標準化戦略の立案、制度・政策決定などが期待されている。そこで、これらの車載SAの理解・活用を促進し、ITSに関する制度・政策の検討ベースを提供することを目的に、車載SAをビジュアルに提示・解説するITSモデルカーデータベースを開発した。このモデルカーデータベースは、インターネットのホームページのように、電子画面のリンクをクリックすることで、ITSの概要から車載SAの細部構成まで順を追って理解できる電子ツールである。この中で、平成10年度の研究成果である想定シナリオに基づいて、ITSサービスをビジュアルに表現したサービスモデルと、車載SAに基づいて、ITSサービスを実現する車とインフラをビジュアルに表現したモデルカーを作成し、これをITSモデルカーデータベースに組み込むことで、車載SAをビジュアルに理解できるように工夫した。また、行政および事業意思決定と機器およびシステムの開発方針決定時の利用シナリオを想定し、行政政策担当者や事業意思決定者向けに、ITSと車載SAの概要について記載した概要編と、機器およびシステム開発者向けに、車載SAの細部構成まで記載した詳細編の設計を行った。詳細編では、技術や装置から車載SAを検索し、関係するサブサービス、システムアーキテクチャ、各種実現方式案、およびその評価結果を抽出できる構成とした。なお、本年度はITSモデルカーデータベースの概要編について製作し、そのCD-ROMを本報告書に添付した

平成10年度の車載SAの開発で、車両・センター間、車両ユニット間、車車間、路車間などの通信が関係する領域を中心に、標準化候補領域を抽出したが、具体的な標準化検討に入るためには、車載SAでは言及していない具体的な車載装置やその構成を明確にする必要がある。そこで、これらの標準化の検討促進材料を提供することを目的に、車載SAおよび想定シナリオに基づいて、IA(Information Architecture)、IM、IDB、車車間通信、DSRC(Dedicated Short Range Communication)応用などの標準化候補領域の装置と機能および構成を具体的に明示したベンチマークカーを開発した。この中で、2003年、2008年、2018年の各年代毎の車載装置の変遷、およびIA、IM、IDB、HMIが相互に関連する構成について考察し、将来の発展を見据えた標準化検討のベースを提供した

また、この考察の過程で、HMIを介して様々なITS情報をドライバに提供する場面では、安全性を考慮した情報提示方法の標準化が重要であると考え、その一構成要素であるドライバへの情報提示を管理するIMに関し先行研究を行い、情報管理に対する一考え方を提示した。なお、IAのついては報告者S99−2を参照されたい

1.はじめに
 1.1 ITSモデルカーデータベースの研究の概要
 1.2 ITSベンチマークカーの研究の概要
2.ITSモデルカーデータベース
 2.1 利用シナリオの想定とコンテンツの分類
 2.2 データベース構造の検討
 2.3 利用例
3.ITSベンチマークカー
 3.1 車載装置とその構成
 3.2 IMの標準化に関する一考察
4.まとめ
 4.1 ITSモデルカーデータベースの研究のまとめ
 4.2 ITSベンチマークカーの研究のまとめ
 4.3 残された課題と今後の計画