−ITS 標準化のための要素機能と試験方法に関する調査研究−
車車間通信システムの標準化に関する調査研究報告書

車車間通信とは通常走行する車と車の間で直接行われる通信を指しており、車両制御、道路交通、周囲に関わる情報をやり取りするものと考えられていた。日本のシステムアーキテクチャを見ると、ITS を支える狭域通信を構成するものとして路車間通信、車車間通信が対応するように並べられている。ここで狭域通信とは、ほぼ見通し範囲で行う通信を指すものとする。これらは共にITS スマートゲートウエイを構成しており、路側(スマートウエイ)と車側(スマートカー)の間、さらに車間で多様なITS アプリケーションに対応した情報を伝達する機能を果たすものである。特に車車間通信については、同アーキテクチャの21 の利用者サービスで、商用車の連続自動運転、緊急車両の救援支援、安全運転支援における危険警告などのサービスで利用が期待されていた

これらITS 狭域通信の中で路車間通信についてはVICS が1996 年に、ETC が2001 年にそれぞれ運用が開始され、さらに民間への利用拡大に向けた通信仕様の整備も行われている

しかし、車車間通信に関しては、長い研究の歴史があるにも関わらず今だ研究の域を出ていない。この理由としては、
・魅力的なアプリケーションが出てこない
・安全運転支援を実現できるレベルの通信の信頼性が確立されていない
・アプリケーションの効果と普及率が相互依存の関係にある
・インフラ主導のサービスと違い事業主体が明確でない(ビジネスモデルが成り立たない。国が主導できない等)
等が挙げられる

ただ、現在、国内ではITS 情報通信システム推進会議の車々間通信システム専門委員会や独立行政法人通信総合研究所、独立行政法人産業技術総合研究所、さらには幾つかの大学において車車間通信の仕様の検討や研究が進められ、また海外では特に安全運転支援を目指したアプリケーションの実用化への動きが目立っている。車車間通信はそれ単独とは限らず路車間通信との併用、さらにはレーダとの併用も考えられ、アプリケーションの可能性も広がっている。ところで、車車間通信は基本的には自車の周囲を走行する不特定の車との通信であることから様々なアプリケーションの実現には通信そのものや通信データの標準化が必須であると考えられる

JSK では平成14 年度の規格化事業の中で「車車間通信システム標準化のための調査研究事業」を立ち上げた。これは、こうした国内や海外の研究状況をみながら、20年に渡るJSKの車車間通信の研究成果を生かして、車車間通信の国際標準化、特にISO/TC204 の活動に寄与したいと考えたからである

上記調査研究として、ISO での標準化活動を念頭において以下を行うこととする。
● まず、標準化の議論の枠組みを明確にしておくことが必要である。車車間通信は日本のシステムアーキテクチャの中にも位置づけられているが、様々な新しい通信メディアの進展に伴って車車間通信の役割や位置づけも変化している。標準化の検討においても、何を狙ってどの部分を対象とするかということを明確にしておく必要がある。そのためには車車間通信の定義や分類の議論が必要となるが、JSK のこれまでの研究で、これらは必ずしも十分行なわれていなかった。今回、研究事業を進めるにあたり、こうした検討を行ない、国際標準化の議論に反映する。
● 車車間通信の実用化の可能性に関する実証データを持っておく必要がある。JSK はこれまでの研究の成果として、協調走行の実現を想定した通信プロトコルとしてDOLPHINを開発している。これは既にITS 情報通信システム推進会議の中で、車車間通信プロトコルの国内ガイドラインの一部として提案されているが、さらに国際標準化への提案も検討する。このためには、より実現性の高いアプリケーションに向けてDOLPHIN の有効性を実証しておく必要がある。本研究の一部としてこうしたことにも取り組む。
● 今後、国内で新たに車車間通信の実用化を検討する機関の増加が予想されるが、これらを含めて連携を図りながら国際標準化を進めることが必要である。JSK はこうした連携を形作ってゆく中核としてとして活動する

現在、米国を中心に無線LAN を標準的なDSRC メディアに位置づける動きが見られる。日本としてどう対応するかはこれからの課題であるが、必要に応じて明確な根拠のもとに対案を準備することも考えられる。こうした対応も念頭に置きつつ、上記の3つの活動方針に沿って本調査研究を進めて行きたい

第1章 はじめに

第2章 研究の背景と進め方
 2.1 国内動向概要
 2.2 海外動向(欧州)
 2.3 海外動向(米国)
 2.4 ISO/TC204 の動向
 2.5 車車間通信プロトコルDOLPHIN について
 2.6 車車間通信のアプリケーションと標準化
 2.7 今年度の活動項目
 2.8 推進体制

第3章 車車間通信コンセプト/リファレンスモデルに関する検討
 3.1 車車間通信の定義

 3.2 車車間通信の分類
 3.3 車車間通信アプリケーションの分類例
 3.4 まとめ

第4章 車車間通信プロトコルの検討
 4.1 目的
 4.2 想定アプリケーション
 4.3 車車間通信プロトコルに対する要件
 4.4 実験
 4.5 現DOLPHIN に対する見直し
 4.6 今後の課題

第5章 まとめ
 5.1 個別テーマの成果について
 5.2 コンセプト/リファレンスモデルについての課題
 5.3 プロトコル実験についての課題
 5.4 今後の進め方

附録1 ミリ波利用動向
 附録1.1 ミリ波の全般的状況
 附録1.2 24GHZ 帯の状況
 附録1.3 60GHZ 帯の状況
 附録1.4 76GHZ 帯の状況

附録2 UWB 動向
 附録2.1 UWB の経緯
 附録2.2 UWB の特徴、アプリケーション
 附録2.3 UWB の原理・方式
 附録2.4 UWB に関する団体、各国の状況
 附録2.5 UWB の課題