ITS車載機器標準化のための要素機能と試験方法に関する調査研究
【ITSサービスにおける中広域通信システムの機能要件の標準化に関する調査研究】
−次世代広域通信システムの機能要件の標準化に関する調査研究−

●背景

WG16では、1997年10月のベルリン会議において米国から提案されたワークアイテム「TICS Wide Area Communications: Message Protocol Structure」(NP15662:メッセージテンプレート)に加え、2000年10月のナポリ会議において英国から提案されたPWI(Preliminary Work Item)「To investigate the Standardization requirements for medium and long range、 high speed、 Communications for broadcast、 point-point、 vehicle-vehicle、 and vehicle-point in the ITS sector」(ITSアプリケーションに活用する中広域通信システムの要件調査)から派生した5つのNP(New work item Proposal)と3つのPWIの審議が進められている。 これら8つのワークアイテムは、CALM(Communications Air-interface Long and Medium range:中広域通信システムのアプリケーションインターフェース)と称され、SWG16.1として活動を行っている。CALMでは、ISO/TC204/WG15との差別化を図るため、通信ゾーンをDSRC(Dedicated Short Range Communications)よりも大きなものに設定するとともに、データレートも高速なものを目標にしている。 CALMの下位レイヤ(L1、L2)のうち、M5(5GHz帯通信)およびIR(赤外線)については、欧米の強いイニシアティブにより、上位レイヤ(L3以上)およびメディア選択に係る管理機能については日本のイニシアティブにより積極的な検討が行われている。 一方、日本では、ETCならびに路車間通信を利用した様々なアプリケーションを実現するためにDSRCの活用を想定しており、その仕様として既にARIB STD-T75を策定済みである。

●目的

本調査研究は、上記の背景を踏まえ、ISO/TC204/WG16のワークアイテムであるSWG16.1「CALM」(中広域通信システムのアプリケーションインターフェース)、SWG16.2「Internet in Support of ITS」(広域通信システムを用いたインターネットのITSへの活用)に関連する国際会議の動向を背景に、ITSにおける広域通信システムの活用とそれによるITSサービスの実現を目指し、我が国のITS関連民間企業の国内サービス展開、海外サービス展開を念頭に、CALMに対する日本の対応方針を明らかにすることを目的とする。

●調査の概要

1.CALMアーキテクチャの通信インターフェースに関する調査研究

 CALMに対する日本の今後の対応方針を検討するため、適用可能と思われるアプリケーションおよび展開が予想される地域別の展開可能性を調査した上で、今後のCALM規格に関する路車間通信の展開および実配備に係る可能性について仮説の立案を行い、我が国の民間企業への影響を分析した。さらに、CALMメディアの中でも検討の進捗が速く、同じ5GHz帯を利用することから日本のDSRCとの競合が予想されるCALM-M5規格に着目し、CALMメディアの機能と性能、実運用時の課題の分析および日本のDSRCとの関係整理を行った上で、国際標準の場におけるCALMに対する日本の今後の対応方針を検討した。

(1)CALMの今後の展開可能性に係る仮説立案
 CALMの標準化作業が積極的に行われている現状を念頭に、今後のCALM規格の路車間通信の展開、実配備に係る可能性について、仮説を立案した。具体的には、どういったアプリケーション実現のために、どの地域(国別など)にどの時期にCALMが展開、実配備されるかについての仮説を立てた上で、我が国の民間企業への影響を分析した。

(2)CALM-M5の機能調査
 前節(1)で立案した仮説を念頭に、5GHz帯を利用することから特に日本のDSRCとの競合が予想されるCALM-M5規格に着目し、通信容量、変調方式などの通信特性の調査を行った。なお、調査にあたっては、適宜、日本のDSRC(ARIB STD-T75)との比較を行うこととした。

(3)実運用時の性能と課題
 前節(2)に引き続き、CALM-M5に着目し、実運用時の性能と課題を整理した。実運用時に求められる具体的な性能要件としては、以下の要件を考慮した。
 ・高速走行車両との通信可能性
 ・屋外での通信可能性
 ・通信の即応性
 ・反射波等の影響の有無等
上記の性能要件については、CALM-M5のドラフトの分析を行う他、これまで米国において行われた実走行実験および米国で本年度行われるフィールド実験などの情報を収集することにより分析を行った。

(4)CALMの全体構造の把握
 CALMの全体構造および各メディアとのインターフェ−スとなるLower SAPについて、それらの構造や汎用性の面からの分析を行い、現在、CALMで検討されている5つのメディア以外の他メディアの接続可能性について検討した。

(5)我が国のDSRCとの関連整理
 前節(4)の分析結果を受け、日本のDSRCであるARIB STD-T75とCALMとの関連について整理した。また、ARIB STD-T75をメディアの1つと仮定した場合のCALMへの接続可能性について、別途国内において開発が進められているアプリケーションサブレイヤ(ASL)も念頭に置いた上で、分析した。

(6)CALMに対する今後の対応方針の検討
 これまでの検討を踏まえ、国際標準の場におけるCALMに対する日本の今後の対応方針を検討した。

2.CALMアーキテクチャのアプリケーションインターフェースに関する調査研究

 WG16で検討されているCALMアーキテクチャの中でCALM融合層(Convergence Layer)に関する基本機能を取りまとめることを目的として実施した。

(1)CALM融合層の要件の検討
 CALM融合層の要件を、ISO/TC204/WG16国際会議での議論、及び融合すべき標準の特徴をもとに検討し、CALM全体のオペレーションコンセプト、CALM融合層検討にあたって対象とする通信シナリオ、CALMのコンセプトを実現するための通信接続の識別子のあり方、CMEとNMEの役割分担等を整理した。

(2)CALM融合層別初期設定手順の検討
 上記の(1)での要件を踏まえ、通信接続の初期設定手順のあり方を検討した。 具体的には、前処理となるIPアドレスの設定、デバイス構成情報の登録、アプリケーションの登録と、初期の通信接続手順、ディレクトリサービス等について詳細化を行った。

(3)CALM融合層別CMEインターフェースの検討
 上記(2)で整理した初期通信接続手順の中で、CMEが他のエンティティとのメッセージ交換をする部分、あるいはデータ登録をする部分についてインターフェース仕様の検討を行った。特に、ISO/TC204/WG16の方針において、IEEE P1609とのハーモナイゼーションを行うといったことから、同ドラフトとの比較についても行った。

3.システムマネジメント機能に関する調査研究

 WG16で検討されているCALMアーキテクチャの中でCMEはアプリケーションからの通信要件と利用可能な通信メディアの特性から最適なメディアの優先順位付けを実施する。本調査研究はCME自体の機能の詳細化を取りまとめることを目的とし、(1) CMEの内部処理、(2) 処理に関連する機能間の処理、の2つの観点から整理した。

(1)CMEの機能定義の具体化
 平成14年度規格化事業の結果を踏まえ、CMEが有するべき機能定義を具体化する。定義の形式としては、(1) 内部処理、(2) 関連する機能間の処理の2つの観点から行った。

(2)CME内部処理の定義
 (1)で定義した内部処理の概略設計を行う。具体的には、機能毎で必要となるパラメータの定義、パラメータの処理概要を定義した。

(3)CMEの各機能間のインターフェースの定義
 (1)で定義した関連する機能間の処理の概略設計を行う。具体的には、アプリケーションとのインターフェースにおいて処理されるパラメータを定義した。

(4)概略設計の取りまとめ
 (2)、(3)の検討結果をもとに、CMEの概略設計書をとりまとめた。

4.通信メディア切替え機能に関する調査研究

 WG16で検討されているCALMアーキテクチャのうち、本研究では、経路制御とメディア切替え機能(R&MS: Routing & Media Switching)、およびネットワーク管理エンティティ(NME: Network Management Entity)の機能について検討した。

(1)CALMにおける通信メディア・通信メディア切替え機能の位置づけ
 CALMアーキテクチャの中で対象とする経路制御とメディア切替え(R&MS)、ネットワーク管理エンティティ(NME)の位置づけを明確化した。

(2)IPv6の概要
 CALMでは、IPv6を利用して通信メディアの違いを隠蔽することが前提となっている。本節では以後の検討に必要となるIPv6のアドレス、ヘッダ、経路制御、近隣探索などについて概要を整理した。

(3)CALM特有の要求事項
 通常のインターネットで使われているインターネットプロトコルに対してCALM特有の要求事項が存在する。本章ではこのようなCALM特有の事項(通信シナリオ、特徴、要求事項)について整理した。

(4)経路制御およびメディア切替え機能に関する検討
 本節では、前節までの議論をうけて、経路制御およびメディア切替え機能について検討した。

(5)NME機能の概要
 本節では、前節までの検討結果をうけて、NMEの役割、各通信シナリオでの動作例、CME及びR&MSとのインターフェースについて考察した。