-ITS 車載機器標準化のための要素機能と試験方法に関する調査研究-
システム限界のドライバへの伝達手法に関する調査研究

各種センサ技術の向上により、車間距離自動制御装置(Adaptive Cruise Control system;ACC)や車線逸脱防止支援装置(Lane keeping assistance system)などの、ドライバの運転負荷軽減を目的とする様々な運転支援装置が実用化されつつある。これらの装置によりドライバの運転操作を支援中に、システムに定められた支援範囲を超える状況が発生した場合には、システムからドライバへ速やかに且つ円滑に運転を切り替える必要がある

このため、例えば、運転支援装置のみでは危険状態を十分に回避できない「システム限界」の状態に至る可能性がある場合には、ドライバに回避操作を促す「システム限界警報」の呈示が有効であると思われる

このシステム限界警報の呈示は、低覚醒状態のようなドライバの運転注意力が低下している走行状態において、システム限界状態の判断を支援するという観点で効果が期待される。一方で、先行研究では、危険回避のための操作が必要な状態において、システム限界警報が呈示されるまで、ドライバが十分な危険回避操作を行わず、警報タイミングの設定によっては、システム限界警報を呈示しない場合と比較して、ドライバの危険回避のための操作が遅延するといった運転行動として顕在化する可能性があることが示唆されている

本調査研究では、渋滞走行時において先行車両への追従走行を可能とする低速ACC を例として、ドライバの制動操作行動に着目し、システム限界警報の呈示による効果、および警報の呈示による効果をより高めるためのシステム限界警報の呈示要件を策定するための実験的データを収集することを目的とする。実験には、(財)日本自動車研究所(以下JARI と記す)のドライビングシミュレータを用い、主として、警報を呈示する条件と呈示しない条件の双方において、通常覚醒から低覚醒に至る覚醒度別でのドライバの制動操作タイミングについて調査する。次いで、これらドライバの制動操作タイミングおよび先行車両への衝突の頻度から、運転支援装置とドライバを統合したシステム全体での衝突の危険性を意味する統合エラー確率について解析し、システム限界警報の有効性について評価する

ドライバの運転支援に関連する走行制御装置の国際標準化を行うISO/TC204/WG14(Vehicle/Roadway Warning and Control System:走行制御分科会)では、低速度域での先行車両への追従走行を可能とする拡張アダプティブクルーズコントロールシステム(Enhanced Adaptive Cruise Control system:EACC)のISO ドラフト策定作業が行われている。本調査で得られた、システム限界警報の呈示タイミングの策定手法に関する調査結果は、システム限界警報の呈示方法に関するミニマム・リクワイアメント策定のためのバックデータとして活用する。

第1章 はじめに

第2章 システム限界時におけるドライバの運転特性
 2.1 実験方法
 2.2 実験結果

第3章 システム限界警報の有効性評価
 3.1 ドライバ・システム統合エラー確率検討モデル
 3.2 パラメータの推定
 3.3 統合エラー確率の計算

第4章 まとめ
 4.1 システム限界警報の呈示がドライバ心理に与える影響
 4.2 システム限界時におけるドライバの制動操作行動
 4.3 ドライバ・システム統合エラー確率モデルによるシステム限界警報の有効性評価

参考文献

付録