セキュリティ
自動車では、GPSやキーレスエントリーなどが既に車両の外部と通信で繋がっており、それらに使われる通信もV2X(Vehicle to Everything:車両対車両、インフラなど)や、セルラー通信、WiFi / Bluetoothなど、様々なものに広がっています。特に、自動運転システムでは、通信により得られる情報を走行制御にも活用することが想定されており、情報が正確であることが重要となります。
また、自動車がインターネットなど外部と繋がるようになってくると、IT業界、例えばコンピュータ等の課題であるセキュリティを確保することが、自動車でも同様に求められるようになってきます。実際、セキュリティ関連の国際会議「BlackHat」では、自動車のハッキング事例が報告され、リコールに繋がった例もあることから、今、自動車のセキュリティが注目されています。
JARIでは、自動車セキュリティの研究として、主に評価手法の開発、評価基準の研究に取り組んでいます。IT業界でもセキュリティ対策では多層防御ということが言われていますが、自動車の場合にも同様に階層に分けて対策を考えるというのが一般的です。JARIにおいては、主に第2階層以下、つまり車両の内部におけるセキュリティ技術を対象に研究を進めています。

自動車における外部との通信

セキュリティ対策における階層構造の考え方
シミュレーション
事故低減効果シミュレーション開発の目的
自動運転システムを早期に実用化・普及拡大を図るためには、実用化された場合の事故低減効果を社会に訴求していく必要があります。そのためにはコンピュータ・シミュレーションにて現実の交通環境・交通事故を再現し、自動運転システムがあった場合の事故低減効果を定量的に評価する必要があります。
交通事故を再現するシミュレーションには、大きく分けて2つのタイプがあります。1つは、実際の事故の発生場面をリアルに詳細に再現するミクロ的な「事故場面特化型」、もう一つは、現実の交通現象を広域に再現し、そこで発生するさまざまな事故を対象とするマクロ的な「交通環境再現型」に分類されます。
シミュレーションの開発
JARIでは、多様な交通参加者の交通行動・事故再現を行うことができる「交通環境再現型」のシミュレーションの開発に取り組んでいます。
現実の交通環境を再現させるためには、ドライバや歩行者などの交通参加者が、それぞれ認知・判断・操作の一連の行動を自律的に実施する主体となり、相互の行動に影響し合い、その中で偶発的に交通参加者のミスが発生した場合に事故が起きる仕組みを構築する必要があります。また、事故の大半が交通参加者のミスに起因していることが報告されており、事故低減効果の予測精度を高めるためには、事故実態が示す人間のミスの特徴を模擬できるドライバや歩行者などの行動モデルを開発することが重要かつ難しい課題です。

事故低減効果シミュレーション全体構成